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思いつきで文章の草稿や断片を書くための場所。

草稿帳544

そして、私は記憶を失くしました。 私はぽかんと地べたに座り込み、目の前に立っている男の人を見上げています。 着古したスーツによれたネクタイ、メガネをかけた気弱そうなサラリーマン風の男。額にへんなできものと言われたら納得してしまいそうな小さい…

草稿帳543

前山佑樹の家から自転車で四十分ほど漕いで若干の田舎から田舎分が頭ひとつ抜きん出たようなところに行くと、廃れてしまった建物がゴロゴロある地区にたどり着く。 その日前山が行った場所は建物がゴロゴロあったとでも言うべき場所で、撤退時期を見誤って取…

草稿帳542

目ん玉が飛び出るかと思った。そう呟いた私の前で彼の目玉が飛び出て落ちた。 本当に出してどうするの、と私が笑うと彼は驚きすぎたなと言って代わりの目玉をポケットから出してはめ込んだ。

草稿帳541

俺が入った部屋は真っ暗だった。何があるのかもよくわからない。ここまでの道でも、完全に電気系統の設備は死んでいたが、それでも弱い光を放つ苔が壁に入ったヒビに生えており、完全な暗闇というわけではなかった。 だがその部屋は完全に真っ暗だった。意図…

草稿帳540-531

540 最初にそれを拾ったのはいつだったか、もう数カ月前になるだろう。学校で、掃除の時間に右下に可愛らしいマスコットが描かれているメモ用紙を拾ったのだ。男の子の字で買い物メモか何かの走り書きがしてあり、ずいぶん可愛らしいメモ帳を使っているのだ…

草稿帳530-521

530 「ぱぱ、昔UFOを呼んだことあるって本当?」 「ああ、本当だ。当時の友人の錦戸と一緒に呼んだんだ」 「すごーい! ぼくもみてみたい! 呼んでよ!」 「いや、駄目だ。きっと恐ろしいことになる」 「えー」 「忘れられない、あの時のことは……」 「おい錦…

草稿帳520-511

520 安全に楽しくお使いいただくために:取り扱い説明書 本製品は非常に刺激的で娯楽性にとよんだ製品ですが、使い方によってはお客様に非常な危険をもたらします。 以下の注意をよくお読みになって、注意の上でご使用ください。 「要は」 肝心な部分を読む…

草稿帳510-501

510 人生でひとつ。一人にたった一単語。絶対に言ってはいけない言葉があった。 それが何かは判らない。人によって違うからだ。 言うとその場で消滅してしまう。それは「脱落」と呼ばれているが、「脱落」後の人がどうなってしまうのかを知る者はいない。 ご…

草稿帳500-491

500 厄介な病気をこじらせてしまった。 通知された病名は孤独。一過性であるか、長期に渡るかは不明らしい。 現代において最もかかりやすい病気の一つだ。 人によっては死に至ることもあるという。ただ、非常に細分化されているため、一概に語るのはよくない…

草稿帳490-481

490 ほんの気まぐれだった。 竜が出てくる物語を読み、竜への憧れが高まり、その物語にあった竜の住まう異世界へと繋がる魔法陣を描いたのだ。 気分だけだ。机の上に乗せた一枚のルーズリーフに大きく円を描き、その中に意味も理解できない(作中に細かく解…

草稿帳480-471

480 『”有名人”になんてなるもんじゃないね、この時代』 スピーカー越しに声は言った。 僕は誰かに覗かれているのかと、ぎょっとなって部屋中を見渡す。 監視カメラはついていたが、僕の方を向いてはいなかった。 ここは博物館の一室で、この部屋はムルサプ…

草稿帳470-461

470 ロボットは朝四時になると充電を終えて起動する。 「おはようございます。本日は曇りです。外出の際には携帯傘を携行すると良いかと存じます」 「朝食の用意ができております。特にリクエストを頂きませんでしたので、お好みのフレンチトーストをご用意…

草稿帳460-451

460 新しく開発された転送装置を是非とも使ってみたいという要望があり、不安が多くあったのだが押し切られる形で私は学者の菊沢の同行を許可した。 この問題について菊沢を責めるのは角違いであるのは判っている。むしろ悪いのは私たち技術者側なのだが、見…

草稿帳450-441

450 夜が明かりを奪っていく。私は夜に奪われていく。人工の光ではよほど強いものでもない限り、私は希薄になる。 私は七歳を境にして、私は私の影と入れ替わってしまった。でも誰一人として気がつかない。「私」はここにいるのに、私はいつも明るく笑顔で振…

草稿帳440-431

440 天井のない工場跡に四人の男女が居た。一組は少年少女。少年はキリヒトと呼ばれており、理知的に見える顔立ちとは逆に頭の悪そうなシャツに短パンで、少女の方は伊都と呼ばれ、鼻が高く赤の強い黒髪を縛るでもなく自由にしており、どこかの制服らしきも…

草稿帳430-418

430 この世のものとは思えない安っぽい音のバイクが近づいてくる。この音を喫茶店店長渋沢義一は知っていた。バイクの持ち主は女は判らないという言葉以上に判らない女で、その安っぽい音のバイクはヒッチハイクに飽きた際に買い叩いたらしい。 バイクの外見…

草稿帳417-401

417 「二名様でよろしかったでしょうか?」 「おいちょっと待て」 「は、はい?」 「よろしかったとは何だ。日本語がおかしいだろう。正しく言い直せ」 「は、はい失礼致しました。お客様は現在二名様でご来店なさいましたが、後ほどお連れ様が来ることもあ…

草稿帳400-386

400 猫は今日も塔の上で寂しく友達の帰りを待つ。 思えばあの妙になれなれしい男も、これで一ヶ月ほど見ていないことになる。帰りが予定より三週間も遅れている。何かあったのだろうか。最初は約束を破った男に腹をたてていたが、こうまで遅いと何かあったの…

草稿帳385-371

385 「腹が立つわ……!」 そう言って少女は机を拳で叩いた。 「知った風な口を利くな、ですって!? あのくそじじい、何様のつもりよ!?」 少女は八つ当たりするものでも探しているのか机の上を見渡すが、紙とペンしかなかったため、ペンをとり、さらさらと…

草稿帳370-351

370 一体、そこはどれほど前に死んだ都市なのだろうか。 街の形骸は当の昔に風化を始め、見渡せる景色は何処もかしこも色あせている。 その崩れた都市の中心部にある宮殿も然り。 中に入ると建物のそこら中に戦傷が見られる。切り崩された柱。壊れた壁。叩き…

草稿帳350-341

1 幸せ 2 怒り 3 寂しい 4 元気 5 冷酷 6 痛み 7 恐怖 8 意地 9 号泣 10 強がり 11 虚無 12 絶望 13 悩む 14 悦 15 驚き 16 複雑 17 期待 18 がっかり 19 企み 20 軽蔑 21 嘲笑 22 感動 23 どうして 24 意地悪 25 我慢 26 照れ 27 憎しみ 28 微笑み 29 まい…

草稿帳340-329

1 幸せ 2 怒り 3 寂しい 4 元気 5 冷酷 6 痛み 7 恐怖 8 意地 9 号泣 10 強がり 11 虚無 12 絶望 13 悩む 14 悦 15 驚き 16 複雑 17 期待 18 がっかり 19 企み 20 軽蔑 21 嘲笑 22 感動 23 どうして 24 意地悪 25 我慢 26 照れ 27 憎しみ 28 微笑み 29 まい…

草稿帳328-316

1 幸せ 2 怒り 3 寂しい 4 元気 5 冷酷 6 痛み 7 恐怖 8 意地 9 号泣 10 強がり 11 虚無 12 絶望 13 悩む 14 悦 15 驚き 16 複雑 17 期待 18 がっかり 19 企み 20 軽蔑 21 嘲笑 22 感動 23 どうして 24 意地悪 25 我慢 26 照れ 27 憎しみ 28 微笑み 29 まい…

草稿帳315-301

1 幸せ 2 怒り 3 寂しい 4 元気 5 冷酷 6 痛み 7 恐怖 8 意地 9 号泣 10 強がり 11 虚無 12 絶望 13 悩む 14 悦 15 驚き 16 複雑 17 期待 18 がっかり 19 企み 20 軽蔑 21 嘲笑 22 感動 23 どうして 24 意地悪 25 我慢 26 照れ 27 憎しみ 28 微笑み 29 まい…

草稿帳300-291 自分の読みたいものは、ひとに期待せず、自分で書けばいいのだ。by「ライオンと魔女」あとがき

300 ある所に動物の像がありました。 それは狛犬のような、ライオンのような、聞きかじりの知識を元に造られたようななんともあやふやなものでした。 そして、その像の周りには何もありませんでした。ただ、草一本無い荒涼たる地にポツンとあります。そこは…

草稿帳290-271 自分の読みたいものは、ひとに期待せず、自分で書けばいいのだ。by「ライオンと魔女」あとがき

290 「では、お二人は永遠の愛を誓いますか?」 「誓います」 「…………」 「…? …誓いますか?」 「…正志?」 「誓え…ません…」 ザワザワ 「な! 何言ってるのよこんな時に! 冗談はやめて!」 「すまん…」 「正志…あなた…まさか…」 「実は…俺…美智子のことが……

草稿帳270-251 自分の読みたいものは、ひとに期待せず、自分で書けばいいのだ。by「ライオンと魔女」あとがき

270 西日が差し込む室内で、ピアノの音が流れている。 部屋の中央に、主のごとき存在感でそこに在るグランドピアノ。それを白いドレスをきた少女が弾いている。少し後ろで、老いた執事が西日を浴びながら静かに見守っている。 少女は置かれている楽譜を見よ…

草稿帳250-234 欲しがるものは、費やすものの半分の価値も無い。

250 障子が開かれて部屋に朝日が射すのを肌で感じ、眠っていた秀次郎は傍らの刀を掴んで横に転がって飛び起き、そのまま抜刀した。 逆光で顔がわからなかった。やがて目が慣れ、自分の居室に居る人物を視認すると刀を鞘に収めるのも忘れ、慌てて平伏した。 …

草稿帳233-201 欲しがるものは、費やすものの半分の価値も無い。

233 恋は人を変えるというがぼくの姉ほどそれが顕著な人は居ないんじゃないかと思う。 普段はどちらかというと内向的で、優しい振る舞いをするいい人なのだが、一度誰かに恋をすればベクトルが全てその人に向くので、他が一切どうでもよくなるらしい。 中学…

草稿帳200-176

200 破壊童話と再生神話のもっとも忠実な駒として、ありすは動く。 華奢な双肩は創造の重荷を背負うのに適していない。 子供に夢を与える無邪気な童話の主が、大人を魅了する妖艶な淫話の主が築く夢。 人の一生など本当に意味があるものだったのか? 無邪気…

草稿帳175-151

175(14) 気になるのだから仕方が無い。 僕は昨日のように昼用に焼き立てのパンを、昨日より少し多めに持ってゆく。 あの魔女の女の子は一体何処に居るのだろうか。 ここら辺の子じゃないようだから、誰かの家に仮住まいさせて貰っているのだろうか。 会える…

草稿帳150-126 「いま君は何か思っている。その思いついたところから書き出すとよい」 byヘンリー・ミラー

150 「わあ・・・」 私はその目に映る光景に思わず感嘆の声を上げた。荒野の真ん中にぽつんとある円形のそれはネオンなどでエメラルド色が強く輝き、まるでオアシスか幻想郷のようだった。 と、云うのも単なる夜景ではあるのだが、その美しさは半端ではない。ま…

草稿帳125-101 「いま君は何か思っている。その思いついたところから書き出すとよい」 byヘンリー・ミラー

125 「兄さん」 加古が家の中を歩いている。途中途中通る部屋を覗いて、兄が居ないのを確認して周っている。 「兄さん?・・・出掛けたのかしら」 云って、一階通路を途中まで来て、靴を確認しようと引き返しかける。 ガラリ。と風呂場がある所のドアが急に開い…

草稿帳100-76

100 菊沢佳恵宅には、その筋の人が見たら垂涎モノの物品の数々が眠っている。 その中の一つに玄関の靴箱の上にある、小さな、部屋の模型のようなものがある。 それは一見婦人の寝室に見える。下一面に赤い絨毯が敷き詰められていて、右端にはベッド、左端に…

草稿帳75-51

75 見上げれば何時も、正方形の枠にはまった鉄格子の向こうに木が見えた。 唯一それだけが季節の巡りを少女に教えてくれる。 今は紅葉がなって、時折鉄格子の合間から枯葉がひらりと落ちてくる。 少女は七冊目になるスケッチブックに、クレヨンで地上に見え…

草稿帳50-26

50 「何故私がそんな子供を殺らねばならないのです」 黒いスーツを着て、二股の黒剣を持つ女が、いささか不服そうな色を交えて云う。 「厄介だからだ」 三人用ソファーを足まで乗せて占有している男は、面倒臭そうに答えた。 「そんな理由で・・・」 「おい、一…

草稿帳25-1

25 矢が、何本も刺さっていた。 いまやその紺碧の鎧でさえも血に染まっている。最早長くは無かろうということは、敵対する軍勢にも判った。 たった一人、たった独りで、その伝説の勇士と謳われた者は敗走する主君の殿を努めた。 その戦いの凄まじさは、その…