思いつきで文章の草稿や断片を書くための場所。

草稿帳200-176

200 破壊童話と再生神話のもっとも忠実な駒として、ありすは動く。 華奢な双肩は創造の重荷を背負うのに適していない。 子供に夢を与える無邪気な童話の主が、大人を魅了する妖艶な淫話の主が築く夢。 人の一生など本当に意味があるものだったのか? 無邪気…

草稿帳175-151

175(14) 気になるのだから仕方が無い。 僕は昨日のように昼用に焼き立てのパンを、昨日より少し多めに持ってゆく。 あの魔女の女の子は一体何処に居るのだろうか。 ここら辺の子じゃないようだから、誰かの家に仮住まいさせて貰っているのだろうか。 会える…

草稿帳150-126 「いま君は何か思っている。その思いついたところから書き出すとよい」 byヘンリー・ミラー

150 「わあ・・・」 私はその目に映る光景に思わず感嘆の声を上げた。荒野の真ん中にぽつんとある円形のそれはネオンなどでエメラルド色が強く輝き、まるでオアシスか幻想郷のようだった。 と、云うのも単なる夜景ではあるのだが、その美しさは半端ではない。ま…

草稿帳125-101 「いま君は何か思っている。その思いついたところから書き出すとよい」 byヘンリー・ミラー

125 「兄さん」 加古が家の中を歩いている。途中途中通る部屋を覗いて、兄が居ないのを確認して周っている。 「兄さん?・・・出掛けたのかしら」 云って、一階通路を途中まで来て、靴を確認しようと引き返しかける。 ガラリ。と風呂場がある所のドアが急に開い…

草稿帳100-76

100 菊沢佳恵宅には、その筋の人が見たら垂涎モノの物品の数々が眠っている。 その中の一つに玄関の靴箱の上にある、小さな、部屋の模型のようなものがある。 それは一見婦人の寝室に見える。下一面に赤い絨毯が敷き詰められていて、右端にはベッド、左端に…

草稿帳75-51

75 見上げれば何時も、正方形の枠にはまった鉄格子の向こうに木が見えた。 唯一それだけが季節の巡りを少女に教えてくれる。 今は紅葉がなって、時折鉄格子の合間から枯葉がひらりと落ちてくる。 少女は七冊目になるスケッチブックに、クレヨンで地上に見え…

草稿帳50-26

50 「何故私がそんな子供を殺らねばならないのです」 黒いスーツを着て、二股の黒剣を持つ女が、いささか不服そうな色を交えて云う。 「厄介だからだ」 三人用ソファーを足まで乗せて占有している男は、面倒臭そうに答えた。 「そんな理由で・・・」 「おい、一…

草稿帳25-1

25 矢が、何本も刺さっていた。 いまやその紺碧の鎧でさえも血に染まっている。最早長くは無かろうということは、敵対する軍勢にも判った。 たった一人、たった独りで、その伝説の勇士と謳われた者は敗走する主君の殿を努めた。 その戦いの凄まじさは、その…