思いつきで文章の草稿や断片を書くための場所。

2007-12-31から1日間の記事一覧

草稿帳450-441

450 夜が明かりを奪っていく。私は夜に奪われていく。人工の光ではよほど強いものでもない限り、私は希薄になる。 私は七歳を境にして、私は私の影と入れ替わってしまった。でも誰一人として気がつかない。「私」はここにいるのに、私はいつも明るく笑顔で振…

草稿帳440-431

440 天井のない工場跡に四人の男女が居た。一組は少年少女。少年はキリヒトと呼ばれており、理知的に見える顔立ちとは逆に頭の悪そうなシャツに短パンで、少女の方は伊都と呼ばれ、鼻が高く赤の強い黒髪を縛るでもなく自由にしており、どこかの制服らしきも…

草稿帳430-418

430 この世のものとは思えない安っぽい音のバイクが近づいてくる。この音を喫茶店店長渋沢義一は知っていた。バイクの持ち主は女は判らないという言葉以上に判らない女で、その安っぽい音のバイクはヒッチハイクに飽きた際に買い叩いたらしい。 バイクの外見…

草稿帳417-401

417 「二名様でよろしかったでしょうか?」 「おいちょっと待て」 「は、はい?」 「よろしかったとは何だ。日本語がおかしいだろう。正しく言い直せ」 「は、はい失礼致しました。お客様は現在二名様でご来店なさいましたが、後ほどお連れ様が来ることもあ…